セミナーレポート

WEBの国際標準と世界の中の日本

情報処理学会連続セミナー3回目が開催

2011/12/5

 既に世界中の情報インフラとなったインターネット、そしてWEB。ブラウザさえあれば世界に対してどんな発信もできる時代となった今、様々なコンテンツがビジネスモデルになり得る。ここで使われるWEB技術の国際標準化は「先にやったもの勝ち」だ。

 中国・韓国が本格的に様々なWEB技術の世界標準化を目指す中で、日本の活躍はまだまだ芳しくない。11月17日に行われた情報処理学会の連続セミナー3回目「コンシューマサービスを支える要素技術と標準化動向」では、WEBにまつわる様々な国際標準会議の場で活躍するパネリストたちが、世界の動向とその中で日本があるべき姿を模索した。

コーディネーターの一色正男・神奈川工科大学教授。W3Cに参画している
コーディネーターの一色正男・神奈川工科大学教授。W3Cに参画している

国際標準とW3C


 「国際標準と一口にいっても、『デジュール標準』『デファクト標準』『コンソーシアム標準』がある」と述べたのは、コーディネーターの一色正男神奈川工科大学教授だ。


 「デジュール標準」とは、ISO、IECのような政府などの団体で策定される標準規格。「デファクト標準」は、例えばマイクロソフトの「Windows」のような、市場の中で高いシェアを獲得して、結果的に事実上の国際標準となったもの。関連企業などが合同で規格を策定して標準とするのが「コンソーシアム標準」だ。


 世界中の企業・研究機関・団体で構成され、WEBの標準規格を決める団体「W3C」の策定する規格は、コンソーシアム標準に当たる。W3Cの運営委員を務める一色氏は現在同団体で策定が進められている「HTML5」を紹介した。


 HTML5は簡単に言えば「全てがブラウザ内で完結する」というもの。例えば、ブラウザ内で画像をドラッグ&ドロップすることが可能となる。WEB上で映像を見るためには、これまでブラウザにFLASHなどのアドオンを入れる必要があったが、これらが不要になる。音楽も、周波数をデータとして取り出し、再生することもできる。


 また、日本からW3Cへの提案では、WEBブラウザで書籍の印刷原稿が作れる縦書きレイアウトの仕様や、テレビをHTMLにどのように落とし込むか、などの作業がすすめられているという。

トマデジの舟橋氏は、「テレビとWEB双方の関係者の歩み寄りが必要」と訴えた   標準化に対する姿勢などが議論されたパネルディスカッション
トマデジの舟橋氏は、「テレビとWEB双方の関係者の歩み寄りが必要」と訴えた   標準化に対する姿勢などが議論されたパネルディスカッション

テレビとWEBの意思疎通


 WEBとテレビをどのようにリンクさせていくか。クイズ番組で、正解者が誰になるかをリアルタイムで予想するアイコンや、選挙番組中にTwitterを表示させ、テレビ画面上からでもツイートができる仕組みなどは、BML(Broadcast Markup Language)と呼ばれる日本発の規格で作られている。


 これもWEBベースの技術なのでW3Cで規格策定が行われている。ここに参画しているトマデジの舟橋洋介氏によれば、現在日本で販売されているテレビのほとんどに標準でブラウザ機能が備わっており、諸外国と比べても普及率はずば抜けているという。


 また舟橋氏は「ヨーロッパは国際標準の交渉や策定は得意だが、実際の通信環境はADSLが中心でまだまだ貧弱なインフラ。日本が活躍できる余地はある」と強調した。


 ただ、この規格を話し合う場に集まるWEB業界とテレビ業界の間では、テレビとブラウザの捉え方に隔たりがあるという。「テレビ側の人は『ブラウザ機能付きのテレビ』という意識、WEB側は『色々なマルチメディアのユースケース』と捉えている」と舟橋氏は述べ、このギャップを埋めることから話し合いを始めなければならない難しさを説いた。


世界の中の日本は…


 後半に行われたパネルディスカッションでは、こうしたWEBの国際標準化の舞台などついて話が交わされた。


 インターネットの標準技術を策定しているIETF(Internet Engineering Task Force)に参画している慶応義塾大学の中村修教授は、ファーウェイ(中国のIT企業)の国際標準への参画を指摘した。


 IETFは基本的にインターネット技術を持つエンジニアが個人として参加する、というスタンスの団体だ。しかし、参加者同士はお互いが所属する企業も分かっており、自社技術の標準化を目指す、という企業の思惑を背景にした参加もあるという。中村氏は「彼ら(ファーウェイ)は世界のマーケット奪取に向けて戦略的に動いている。そのため単に『日本発の標準を作る』というスタンスではまず世界を相手にして勝つことはできない。何を目的に標準化をするのか、ということをしっかりと持たなければならない」と指摘する。


 また、国際会議はドライに進行し、会議が終わればそれっきり、というイメージが強いが、ソニーの五十嵐卓也氏は「『飲みュニケーション』ではないが、ディナーで気さくに話して意思疎通することも多いし、会議前の根回しが効果的など、意外と日本のやり方と共通性がある」と述べた。


 WEBは、それだけでも世界を巻き込む技術で、技術自体も日進月歩の進化を遂げている。こうした中で、技術のポテンシャルは持っている日本がリーダーシップを取れるかどうか、注目していきたい。

(中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:コンシューマサービスを支える要素技術と標準化動向
主催   
:一般社団法人情報処理学会
開催日  
:2011年11月17日
開催場所 
:化学会館(東京都千代田区)

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