セミナーレポート

CEATEC JAPAN 2011が開催

最新技術の動向や製品作りを見直す講演も

2011/10/31

 2011年10月4日から5日間にわたって開催された、IT・家電の見本市「CEATEC JAPAN 2011」。約17万人が来場し、展示会と並行して開かれたコンファレンスでは多種多様な技術やサービスの紹介、ITコンテンツを作るにあたってのデザインのあり方などが講演された。

CEATEC JAPAN 2011、展示場の様子
CEATEC JAPAN 2011、展示場の様子

3D映像、安全性や映像制作の現場は


 NPO映像評価機構理事長の千葉滋氏は、3D映像の安全ガイドラインについての動向を解説した。


 日本では、業界団体による「3Dコンソーシアム安全ガイドライン」が2004年に策定、2010年4月に改訂されている。これは、立体映像の視聴によって生じる可能性のある、眼精疲労や不快感を軽減するためのものだ。


 ガイドラインでは、映像制作者の注意点として激しいカメラワークやシーンチェンジをなるべく避けること、両眼視差(左右で映る像の違い)の適正な設定を行うことなどが記されている。


 千葉氏は「視聴して自覚的な疲労があったら休憩するなどの視聴条件を守れば、3D視聴で重大な問題は発生しない」と報告した。今後はこうしたガイドラインを国際標準の議論に反映させ、2014年をメドに国際標準化を目指しているという。


 3Dカメラを使用して作品作りをしている立場からも講演がなされた。3Dによる映像作品「あづみの 百年の刻」を制作した映画カメラマンの押切隆世氏が登壇、実際の撮影現場の様子を語った。


 押切氏は「人工的な霧を出したシーンでは、画面の前に霧が迫り、そのまま大気の中へ消えていく」3D表現への驚きを回想した。暗い民家で黒い床を撮影した時は、通常のフィルムで表現されてしまうようないわゆる「つぶれた」黒ではなく、「色としての」黒が表現されたという。


 また、2眼のカメラを使用するため、「人物撮影の際はカメラと人物までの距離を測定、露出を計算して3D映像で適正に視聴できる環境を整えてから撮影に臨む」など、通常の撮影よりもはるかに骨が折れるということも解説した。


 こうした手探りの撮影を通じ、押切氏はフィルム時代の映画を彷彿とさせたという。「デジタル化して誰でも準備なしにきれいな映像が撮れるようになったが、3Dの制作は現場を作らなければいけない。フィルム時代のように手間のかかる現場ではあるが、その分、作りこんだ面白い作品も出てくる気がしている」と、3D映像作品の将来性を述べた。

押切氏の3D作品を視聴する来場者   公立はこだて未来大学の中島秀之学長
押切氏の3D作品を視聴する来場者   公立はこだて未来大学の中島秀之学長

ITがデザインする未来


 製品作りの根本を問う講演もあった。「JEITAデザインフォーラム」では、人工知能・情報学を専攻、コンピュータとトッププロ棋士による将棋の対戦などを企画した公立はこだて未来大学学長の中島秀之氏が登壇、「デザインとは何か」というところから講演を行った。


 通常「デザイン」と言えば、携帯電話などを世の中のニーズや新技術などを利用して形作るものである。


 中島氏はデザインの広義として「“モノ”から“コト”にまで広げること」と述べた。“コト”とは、デザインされたモノ(スマートフォンや情報システム)を実際に使うことによって起こるプロセスだという。


 「ITとデザインはかなり相性がいい」とする同氏は、「現状の活用状況を見ているとITの長所が生かされていない」と述べた。例えばETCも、方法によっては東日本大震災の被災地から入った人には自動的に割引をするということができるはずだが、結局係員のいるところで証明書を見せるという手段になっている、と中島氏は指摘する。


 「電子政府も同じ。紙でやってきたシステムを、そのままITに置き換えただけ」と、ITを介した現状のシステム作りに苦言を呈した。


 「デザインは、構成・評価・再設計のループ」と述べる中島氏は東日本大震災を引き合いに出し、「カーナビは震災を想定したものではないが、被害情報などに活用できる素地はあった。携帯電話も、SNSは活用されたが、この経験を通じたループはまだ回っていない。『非常時』を意識するのではなく、普段から使っているシステムをいつでも使えるものにする。こうした課題を被災地に入って研究しつつ復興に役立てれば、住民・学者双方の一挙両得になる」と強調した。


 メーカーなどが競って出展するCEATEC JAPANは、とかく最先端技術を使用した製品に目が向かいがちになる。だが、これを支える技術がどんなプロセスを経て生まれてきたか、新製品が今後どのような影響を及ぼしていくか、という地味ではあるが「ものづくり」の基本に言及した講演も数多く見受けられた。


 根本に立ち返ったときこそ、イノベーションと呼ばれる現象が起こるのかもしれない。

(中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:CEATEC JAPAN 2011
主催   
:CEATEC JAPAN実施協議会
開催日  
:2011年10月4日~8日
開催場所 
:幕張メッセ(千葉県千葉市)

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