セミナーレポート

「Cloud Computing World Tokyo 2011」が開催

海外の専門家が話した「クラウドの課題点」をピックアップ

このエントリーをはてなブックマークに追加

2011/9/26

 8月31日から9月1日にかけて、東京国際フォーラムで「Cloud Computing World Tokyo 2011」が開催された。クラウドベンダが出展している展示会場の横では、海外から多くの識者や関係者を招いた講演があった。ここ数年クラウドのビジネスにおける利用が増えたためか、新たな問題点も浮上してきている。講演の中で専門家が話した「クラウドの課題点」をピックアップした。

クラウドの普及は目覚ましいが課題点も多い
クラウドの普及は目覚ましいが課題点も多い

クラウドのインフラ的課題点


 かねてより「情報量の爆発」という言葉が頻繁に使われているが、2015年にはインターネット人口が約30億人、インターネットに接続できるデバイス150億台、インターネットトラフィックは1年間で約1ZBになるという予測もある。


 インテル株式会社副社長のキリーク・スカウゲン氏は「こうした情報社会ではクラウドコンピューティングのサービスにおいて、(ただデータセンターなどを拡大するだけではなく)コンピューティングの経済性をより効率的にするのは当然のことだ」と話した。インテル社は、ほかの多くの巨大IT企業と同じく、クラウドのデータセンターに対して莫大な投資を行っている。


 こうして「大手ITゼネコン」が競争的に行っているデータセンターの建設費は、競争の激化に比例して爆発的に増加しており、その費用などがかさめばコスト削減を期待されているクラウドの経済的メリットが減少してしまう。そのため「現在あるデータセンターなどのIT資産を、効率的に扱えるような技術の革新」が必要であるとした。


 またクラウドの利用増加に比例して「2014年には世界のデータセンターの電気消費量は、世界全体の消費量の2~3%程度、コストにして年間300億ドル程度まで増加する」と電気需要における課題も提示。データセンターの維持において、電気料金は大きなコスト要因であり、特に日本においては3.11の震災直後も輪番停電などの影響で、グリーンITやスマートグリッド、環境対応などの側面からも、過大な電力消費はより喫緊の課題として挙げられる。スカウゲン氏は「今後はデータセンターの効率化や省電力などの節電に関する技術革新が必要である」と展望を述べた。

インテル株式会社副社長のキリーク・スカウゲン氏   「Cloud Security Alliance」のリアム・リンチ氏
インテル株式会社副社長の
キリーク・スカウゲン氏
  「Cloud Security Alliance」の
リアム・リンチ氏

クラウドのソフト的課題点


 またクラウドセキュリティに関する米国の業界団体「Cloud Security Alliance」のリアム・リンチ氏は、米国においてクラウド技術が抱えている課題について講演した。


 同氏は「あるアプリケーションにサインインをし、以後すべてのアプリケーションにおいて認証されている状態にあるようにすれば、作業がシームレスになる」と切り出した。システムにおける互換性の程度や、個人認証を共有の程度を「相互運用性」という言葉で表現するが、シームレスな作業を目的とした本人確認の相互運用性確保のためには、IDの適切な利用が必須になる。


 「クラウドが成功するためにも、誰もが受け入れるようなID利用に関する取り決めが必要だが、現在はそこまで至っていない」(リンチ氏)。そのため「あらゆるクラウドの専門家はID利用に関する取り決めに注目すべきである。クラウドのセキュリティという面からだけではなく、クラウドの利用はIDを基に構築しているため、シームレスな利用のためにもIDは極めて重要になる」とし、より快適なクラウド環境のためにも、ID利用に関する専門家間の話し合いを期待した。


 また「近年では、クラウドシステムの安定的な稼働についても、深刻な問題が報道されている」と警戒。2011年4月に発生したゲーム機の個人情報漏洩のような「セキュリティ上の問題」だけではなく、米国ではクラウドの物理的な制約のため、爆発的に増える需要増加への対応が間に合っていない影響で、パブリッククラウドへの移行を見合わせている企業もある。リンチ氏は「クラウド環境は日々変わっている。現在、どのような問題が、どういった形で起こっているのかしっかり把握し、それをどうやって修正するのか対応を考えていくべきだ」と話した。


 メーカーや自治体などで急速に採用が進んでいるクラウド。「コストが下がる」「共通性が図れる」と導入しているケースも多いが、日本よりも常に5年ITが進んでいるといわれる米国でも、新たに課題が浮上してきている。国内の利用においても十分な注意が必要だ。

(井上宇紀)

注釈

*:1ZB
ゼタバイト。データの量などを示す単位。
1ゼタバイトは、1021バイト=10垓(がい)バイト=1000000000000000000000バイト。1TBの10億倍に相当する。

【セミナーデータ】

イベント名
:「Cloud Computing World Tokyo 2011」
主催   
:Computerworld、CIO Magazine
開催日  
:2011年8月31日、9月1日
開催場所 
:東京国際フォーラム(東京都千代田区)

【関連カテゴリ】

クラウド経営改善