セミナーレポート

JAXAが相模原キャンパスを一般向けに公開

体験型イベントなど宇宙に対する理解を深める様々な催しが行われる

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2011/9/1

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、2011年7月29日と30日、神奈川県にあるJAXA相模原キャンパスで公開イベントを行った。

 普段は研究所として機能しているこのキャンパスも、この日は売店が並び、様々なイベントが開催され、多くの人で賑わった。夏休み中の子供も多く訪れ、楽しみながら宇宙について学ぶ姿が見られた。

様々な展示物や体験型のイベント


 この相模原キャンパスは1989年に宇宙科学研究所の中核として開設された。研究・管理棟、研究センター、ロケットや人工衛星の試験を行う特殊実験棟などが設置されている。また、大学院教育などの教育活動のほか、世界各国から研究者の受け入れを行うなど、世界における宇宙科学研究の拠点になっている。


 催しの一環として、キャンパス内には、宇宙に関する様々な展示物が置かれた。室内には、話題を集めた小惑星探査機「はやぶさ」の実物大の模型などを展示。屋外にも固体燃料ロケット「M-V(ミュー・ファイブ)ロケット」の実験模型、「M-3SⅡロケット」原寸模型など巨大な展示物が置かれ、訪れた人たちの目をひいた。

 さらに体験型イベントとして、真空と熱の宇宙環境を地上で作り出す試験室や、電波が反射しない空間「電波無響室」を公開したほか、ペットボトルを使った手作りロケットの打ち上げなども行われた。

小惑星探査機「はやぶさ」の実物大の模型   会場の様子。M-Vロケットの実機模型(右)も
小惑星探査機「はやぶさ」の実物大の模型   会場の様子。M-Vロケットの実機模型(右)も

日本のロケット開発の歴史


 一方、会場では最新の宇宙科学を紹介するセミナーも開かれ、29日には「イプシロンロケットが拓く新しい世界」と題して、イプシロンロケット開発リーダーの森田泰弘氏が講演した。イプシロンロケットはJAXAが2年後の2013年の打ち上げを目指している最新鋭の固体ロケットだ。


 森田氏は日本のロケット開発の歴史を回顧。もともと日本のロケット開発は50年以上前に糸川英夫博士のグループが、小さなペンシルロケットの打ち上げ実験を行ったことに端を発している。その後、1970年にラムダロケットが完成。そして日本で最初の人工衛星「おおすみ」が開発される。さらに1990年代になると、M‐Vロケットが開発されることになる。森田氏は「このM‐Vロケットが日本の宇宙科学の全ての領域で活躍してくれた」とその価値を高く評価した。

イプシロンロケット開発リーダー・森田泰弘氏
イプシロンロケット開発リーダー・森田泰弘氏

 しかし、このM‐Vロケットで日本は世界最先端の成果を得てきたものの、衛星やロケットが大きくなるにつれて開発の時間が長くなり、コストも高くなってきたという。その結果として打ち上げのチャンスが減るという弊害が出ている。「現にM‐Vロケットは実に10年間で、6回とか7回しか打ち上げていない」と森田氏。


 続けて、その後のロケット開発について「機体の大きさは小さくていい。その代わり、開発の時間を短くして、もっと打ち上げのチャンスを増やす流れになった」と説明する。


最新技術を駆使したイプシロンロケットの打ち上げ


 その最たるものが、森田氏らが開発しているイプシロンロケット。JAXAはこのイプシロンロケットの開発や打ち上げを通じ、これまでのロケット開発では見られなかった様々な新しい技術に挑戦している。


 例えば、今まで人手を伴っていたロケットの点検をロケット自身が行う"自律点検"機能を備えさせようと取り組んでいる。また、ロケットの管制についても、これまで大人数で、しかも管制室内で行われていたものを、パソコン1台~2台・少人数で行い、さらにはネットワークにアクセスすることで、原理的には「世界中どこからでもイプシロンロケットの管制を行うこと」を目指しているという。


 森田氏は「イプシロンロケットがそれらを成し遂げた際には、その経験が、次の時代の"標準"になる。我々はイプシロンロケットで、その"標準"を世界に先駆けてつくろうとしている」とし、少人数、短期間での打ち上げに意欲を示した。


 その他にも、日本の固体ロケットに使う燃料について言及。固体ロケットを動かす推進剤は固体燃料と酸化剤を合わせてできているが、それにアルミニウムの粉末を足すことで、燃焼温度を摂氏2000度から摂氏3000度にするなどして性能を高めていることなどを明らかにした。


 今回のイベントでは、体験型のコーナーや様々な展示物を通じて、多くの人が日頃宇宙に対して抱いている疑問が解消され、宇宙に対する関心や興味を一層掻き立てられたことだろう。またセミナーでも、ロケット開発の歴史や、イプシロンロケットなど最新の取り組みについて知ることができた。子供を中心とした参加者たちは得るものが多かったのではないだろうか。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:「JAXA相模原キャンパス 特別公開」
主催   
:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
開催日  
:2011年7月29 日~7月30日
開催場所 
:JAXA相模原キャンパス(神奈川県相模原市)

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