セミナーレポート

「スマートコミュニティ」ビジネスの現状と課題

スマートグリッド展2011・次世代自動車産業展2011が開催

このエントリーをはてなブックマークに追加

2011/7/4

 ただでさえ人口減少で市場が縮小する日本経済に、追い打ちをかけた東日本大震災。それぞれの産業は、新たなビジネスの場を海外に求めている。東京ビッグサイトで行われたスマートグリッド展の2日目、2011年6月16日のパネルトークは「海外展開のための支援について」。スマートコミュニティの海外販売に関わる経産省を始め、ディベロッパーやITベンダー、資金面で関わる国際協力銀行などのメンバーが顔をそろえ、売り出し中の「スマートコミュニティ」販売の現状や課題などが語られた。

NEDOのスマートコミュニティの模型
NEDOのスマートコミュニティの模型

スマートコミュニティビジネスは「GtoG」が大前提


 「スマートコミュニティ」。単純に言えば新しい街の形だ。電力の発電から送電、需給までをITで管理し(スマートグリッド)、自家発電など様々な付加価値がついたビルや住宅がたちならぶ(スマートビル・スマートハウス)。行き交う人々は無公害型のバスなどを利用するというスタイルで描かれるのが一般的だ。


 日本では、企業が持っているITや環境技術などをセットにして、上記のような街づくりの海外案件の獲得を目指している。2009年にインドのデリー・ムンバイ間1500kmを結ぶ貨物専用鉄道敷設計画を軸に、沿線の都市開発を進めるプロジェクトが動き始めた。


 2010年4月には「スマートコミュニティ・アライアンス」が設立される。「チーム日本」とも言える「スマートコミュニティ・アライアンス」はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)や経産省の支援を軸に、電力・ガス・家電・情報通信・ディベロッパーなどの企業が参加している。


 東芝の工藤謹正氏は、「スマートコミュニティの海外販売は、まずGtoG(government to government)、政府間の話し合いの中から案件が作り上げられていく」と述べ、企業だけでのやり取りでは成り立たないことを強調した。現在、チーム日本で取り組んでいる案件は上記インドのほか、東南アジア、中国、ヨーロッパ、米国、中東など多岐にわたっている。


 工藤氏は「欧州や米国ではスマートコミュニティの実証実験色が強く、新興国では土地開発がメインである」と、地域ごとのニーズを紹介した。

展示場では、「エコ」ではなく「節電」を売りにしたものが目立った   キャプション>海外スマートグリッド販売の現状を語る工藤氏
展示場では、「エコ」ではなく「節電」を売りにしたものが目立った   海外スマートグリッド販売の現状を語る工藤氏

課題は「バラバラのプレゼン」


 スマートコミュニティは、ITのみならず、電力や不動産など関連する業種が多岐にわたる。日本のスマートコミュニティ販売の課題は、様々な日本の先進技術がまとまって相手に提案されていないことだ。


 経産省の松田洋平氏は、「日本は技術やシステムはあるが、提案段階では各企業がバラバラにプレゼンをする。技術やシステムが包括的になっていない」と「チーム日本」の弱点を指摘。マレーシアの2都市で計画されているCO2削減と産業強化を目的とした都市開発プロジェクトでも、個別のプレゼンを受けた相手国の事務次官クラスから「(コストが)高いのだろう」と解釈されてしまったことがあったという。


 上記のプロジェクトは、当然莫大な資金が必要になる。融資を行う側になる国際協力銀行の宮部大輔氏は、プロジェクトのスタートのさせ方に言及。「スマートコミュニティという、『無』から『有』を作るのは体力がいるから、既存のプロジェクトに乗ることをした方がいい」と、自動車メーカーが現地に工場を建設する話などに便乗していくと、スマートコミュニティの話もスムーズになるのでは、と述べた。


 宮部氏は、都市設計という10年以上かかるプロジェクトであるスマートコミュニティは作りっぱなしではなく、「作った後にどう収益を上げ続けることができるかを考えなければいけない」とも述べた。


成功するには現地密着とコストパフォーマンス


 国家間でのビジネスでは、相手を間違えると交渉が進まないのも現状だ。中国では、政府の発展改革委員会という組織にコミットしないと話が進まないという。中国のスマートコミュニティ動向について宮部氏は「都市開発の成功事例を通じて、中央政府が地方を競わせている」と感触を述べた。


 経産省の松田氏も「発注側に、(プロジェクトを成功に持っていかなければという)プレッシャーを感じている人がいる。相手のキーパーソンがわかると話が進みやすい。インドのプロジェクトでは、2年目でようやくインド側から『政府が協力するから、パイロットプロジェクトを出してくれ』と言われた」と実例を挙げた。


 乗り越えるべき壁が多くあるスマートコミュニティ販売だが、東芝の工藤氏は、成功の要件を

・現地に密着したプロジェクト
・スマートグリッドを利用するにあたってのコストパフォーマンス

とした。環境意識の高いヨーロッパでは再生可能エネルギーなどを重点的に打ち出すことや、先進的な技術を利用することでコストを抑えられる、ということだ。


 幅広い分野にまたがるビジネスとなるスマートコミュニティ。日本の技術を世界に売り込み、縮小した国内市場に代わって外貨を稼ぐ。スマートコミュニティの販売が成功するかどうかは「チーム日本」の連係プレー如何にかかっている。

(中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:スマートグリッド展2011 次世代自動車産業展2011
主催   
:日刊工業新聞社
開催日  
:2011年6月15日~17日
開催場所 
:東京ビッグサイト(東京都江東区)

【関連カテゴリ】

トレンド