セミナーレポート

第10回CEEシンポジウムが開催

スマートグリッドの普及に関する事例紹介などが行われる

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2011/7/4

 東京大学エネルギー工学連携研究センター(CEE)は2011年6月10日、研究成果を発表する第10回CEEシンポジウムを行った。今回のテーマは東日本大震災発生後の計画停電など、省エネルギーが問われる中、注目されているスマートグリッド(次世代電力網)。スマートグリッドの普及に関する事例紹介などが行われ、会場の参加者も熱心に聴講した。

講演に耳を傾ける多くの参加者
講演に耳を傾ける多くの参加者

スマートグリッドの必要性


 CEE特任研究員で、元国際エネルギー機関(IEA)の研究員でもある池田裕一氏は、IEAでの経験をもとにスマートグリッドの必要性を海外の事例を紹介しながら説明した。


 池田氏は「スマートグリッドの必要性を考えたときに、電力需要の増加、再生可能エネルギーの普及、送配電インフラの増強、電気自動車の普及の4つの促進因子がある」と述べている。


 まず、電力需要の増加。新興国では需要水準が低いが、今後の増加は非常に大きくなることが予想される。特に中国における電力需要の増加の伸びは顕著だ。同国の電力供給の急激な増加もあり、中国のスマートグリッドは他の国と比べて、電力供給や送電インフラの増強を重視したものになると予想される。


 また近い将来、風力発電や太陽光発電など、再生可能エネルギーの普及がCO2排出削減のために必要となる。すでに各国の電力セクターを中心に普及が開始。例えばデンマークでは2008年に風力発電による電力が全体の20%に達する。また、北欧では各国が連携して電力の需給均衡を保っており、デンマークの風力発電量が少ない時にはノルウェーの水力発電で補完。全発電量に占める割合は将来20~30%となると見込まれている。

CEE特任研究員 池田裕一氏   CEE特任教授 荻本和彦氏
CEE特任研究員 池田裕一氏   CEE特任教授 荻本和彦氏

 送配電インフラについてはOECD諸国では戦後の経済発展に合わせて設備投資が行われてきた。しかし継続的な設備更新を行わなかった米国や一部のEU諸国では、インフラの老朽化によるシステムの信頼性の低下が問題になっている。こうしたことから、送電インフラの更新のニーズは高く、スマートグリッドの投資に結び付く見通しだ。


電気自動車とスマートグリッド


 最後に電気自動車。ETPブルーマップシナリオによると、2050年において、電力需要の10%が電気自動車とプラグインハイブリッドの充電に使われるという。電気自動車の普及により、ピーク需要の増加が見込まれる。電気自動車の充電のタイミングが重なる場合は供給を円滑にするため、発電と送配電の新たな設備投資が必要となる。そこでスマートグリッドが必要になるわけだ。


 電気自動車については日産自動車の企画・先行技術開発本部エキスパートリーダーの上田正則氏が講演。同社のリーフに代表される電気自動車が、普通のガソリンを使う車に比べて変換効率が約4倍となり、太陽光発電などで蓄えた電力を燃料として使うことで注目されていることを解説した。


日本のスマートグリッドの展開と事例紹介


 こうしたスマートグリッドへの促進要因があるなか、CEE特任教授の荻本和彦氏は日本のスマートグリッドを活かした地域のネットワーク“スマートコミュニティ”実現に向けた今後の展開について言及した。


 日本は既に世界でも有数の、強固な公共サービスネットワークを構築しているが、同氏は「その強固なサービスと需要家の協調を取りつつIT技術を活用し、より信頼性が高くよりクリーンな社会システムの構築を目指していくことが求められる」と指摘。その上で、こういったシステムの構築が既に日本のいくつかの都市で実行に移されていることに触れた。


 例えば豊田市では、トヨタ自動車やシャープなどが参加して、70軒の分譲住宅を皮切りにエネルギー利用の最適化を実施したり、約4000台の次世代自動車および20基の充電設備の導入などを通じて低炭素交通システムを構築するなど、スマートグリッドを利用して地方都市型の低炭素社会システムを構築している。今後は日本の他都市にも応用する予定だ。


 荻本氏は他にも、スマートグリッドにおける様々な実証実験を例示。例えば離島では共通のエネルギー問題として、化石燃料への高い依存性のためにエネルギーコストが高いことや環境問題などが指摘されている。すなわち再生可能エネルギーへのニーズが、他地域と比べて高いことになる。荻本氏はそれを克服するため、ハワイのマウイ島で再生可能エネルギーや電気自動車を導入し、最先端の低炭素社会モデルを構築するなど、日米で共同の離島型スマートグリッドの実証実験を行っている事を紹介した。


 節電などで注目されているスマートグリッド。今回のシンポジウムではそのニーズやアプローチについて様々な事例を用いて紹介する非常に有意義なものとなっていた。まだまだスマートグリッドについては浸透していくまでに時間はかかるが、その可能性を知るにはうってつけの場になったのではないだろうか。

(山下雄太郎)

注釈

*:ETPブルーマップシナリオ
IEAで策定された2050年までに世界の温室効果ガスを半減させるためのエネルギーシナリオ。

【セミナーデータ】

イベント名
:「第10回CEEシンポジウム」
主催   
:東京大学エネルギー工学連携研究センター(CEE)
開催日  
:2011年6月10日
開催場所 
:東京大学生産技術研究所(東京都目黒区)

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