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2015/1/29

5G回線

4K動画の再生もなめらかに

 5G回線とは、第5世代移動通信方式を指す。2013年頃から普及し始めた第4世代移動通信(4G、LTE-Advanced、WiMAX2)のさらに次世代の規格にあたる。標準規格の内容は2015年1月現在、未定。仮称でLTE-Xという規格名も出ている。


 5Gの今後のスケジュールとしては、2017年に国際的な規格を定める国際電気通信連合(ITU)によって規格要件が決定される。通信各社が自社技術を提示し、その中から採用技術が決定される予定。実用化は2020年が見込まれている。要件の決定のカギとなるのは、5Gのさまざまな利用例への対応だ。2015年1月には5G専用の技術開発ソフトも、日本国内で発売された。


 5Gの通信速度は4Gの100倍以上(下り10Gbps)、通信容量は約1000倍程度になると予想されている。この技術が実用化されると、デジタル映画を無制限に送受信したり、フルハイビジョン(約207万画素)の4倍の画素数を持つ、4K動画もなめらかにストリーミング再生できる。NTTドコモでは2020年の東京オリンピック開催までに、5Gサービスの開始を見込んでいる。


求められる技術はなにか


 これらを実現するために、「利用できる周波数帯の拡大」「高密度な小型基地局の配置」「効率的な周波数の利用」が急がれている。それぞれについてみておきたい。


 「利用できる周波数帯の拡大」についてだが、現在幅広く利用されている3.9G(LTE、WiMAX)では主に800MHz~2.4GHzまでの周波数帯を通信に使っている。しかし、3GHz以下の帯域はテレビやラジオなどにも数多く割り当てられているため、利用に余裕がないのが現状だ。この帯域を拡大するため、NTTドコモではNECやノキア、サムスンとともに5~70GHzの周波数帯で共同実験を始めている。今後、6GHz以下の周波数帯の割り当てについては2015年の世界無線通信会議(WRC)で、それ以上の周波数帯は2019年の同会議で決定すると見られている。


 次に「高密度な小型基地局の配置」。現在、多くのスマートフォン・携帯電話で利用されている基地局は、通信速度と範囲のバランスの良い帯域を使い広範囲をカバーできる「マクロセル」(大型の基地局)が大半だ。5Gで通信速度が上がることはすでに説明しているが、目標の通信速度を達成するためには、より情報量の多いこれまでよりも高い周波数を利用する必要がある。しかし周波数は高くなるほど通信速度が上がる分、障害物に弱く、地上での伝送距離が短くなるという特性がある。そのため、これまでの周波数帯域で利用してきた大型の基地局だけでは、エリアをカバーすることが困難になってしまう。

広範囲をカバーできるマクロセル
広範囲をカバーできるマクロセル

 こうした事情から、5Gで利用する周波数帯への対応に向けて、マクロセルよりも高い周波数帯に対応し、設置が容易な小型基地局「スモールセル」の配置を進めている。現状のマクロセルと組み合わせることで、幅広い周波帯を利用できるような環境作りが進められている。


 スモールセルによって多数の基地局が設置されれば、通信を確保しやすくなる。スマートフォンの登場で移動通信のトラフィック量は増大し、マクロセル向け周波数の拡大にも限界が見えつつあるため、マクロセルのエリア内にスモールセルを配置することで、利用できる帯域を拡大してネットワーク容量を増やしていく必要がある。

設置が容易なスモールセル
設置が容易なスモールセル

 そして「効率的な周波数の利用」これについては、複数のアンテナを利用して単位時間当たりの処理能力を上げる技術「MIMO」の性能向上や、複数の帯域を束ねることにより通信速度を高速化する方法も必要とされている。


 NTTドコモは上記の現状に関して、主に3つの技術で対応している。それが「ファントムセルコンセプト」「非直交多元接続(NOMA)」ドコモ独自の「Massive MIMO」だ。


 ファントムセルコンセプトは、マクロセルとスモールセルを重ねて配置し相互作用させる技術。ユーザーデータと制御信号を分けて送信するため、高速で伝送ができるのが強みだ。


 NOMAは、複数ユーザーの情報を多重化して同時送信する技術。ほかのユーザーからの干渉を受信側で除去し、周波数の利用効率を高めることができる。4Gで使われた、複数の搬送波に乗せてデータを送信する技術(OFDMA)と比べて、全体の単位時間当たりの処理能力が約50%向上するという。


 Massive MIMOは、基地局に志向性の高い100素子以上のアンテナ素子を設置することで、多数のユーザーからの同時接続を可能にする技術。高周波数帯との相性がよく、通信容足の解決や低電力でのデータ送信が可能となるという。


あらゆるモノがつながる社会


 しかしネットワークやデバイスの管理等、課題もまだ多い。ネットワークがより複雑になるため、運用を簡便かつ低コスト化することが求められる。特に鉄道網で支えられた東京は乗客によるトラフィック密度も高いため、いかに運用するかがカギになる。


 引き続きセキュリティにも課題がある。IoT(モノのインターネット)やM2M(機器間通信)などのように、車・住宅・家電、センサー、ロボットなど、あらゆるモノが無線でネットワーク接続する時代が到来しつつある。そのため情報を傍受されないためにもネットワーク内のデータにアクセスできないような新たな対策が求められる。


 欧州では民間企業が中心となった5Gの研究プロジェクト「METIS」が2012年11月に、また翌年12月には推進組織「5G PPP」が設立された。日本国内では2014年9月に「第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)」が発足している。前述のとおり、5Gは4Gと比べて多種多様なサービスへの応用が期待されるため、モバイル/通信機器以外の新しい無線通信市場でビジネス拡大が見込まれている。特に、無線通信機能の搭載が今後期待されている自動車業界からは、BMWがMETISへ参加している。


 日本で1G(アナログ方式の携帯電話)が始まった1979年から、早35年。新たな無線通信のスタンダードが近づいている。

(國吉真樹)

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