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2012/1/30

スマートグリッド

概要

 スマートグリッドとは、インターネットの通信網や双方向性、コンピュータの演算能力などを利用することで、リアルタイムの電力需要に沿った適切な供給を行い効率的・安定的な発送電行う電力系統のことを指す。


歴史


 2003年、北米でシステム障害を起因とする大停電が起こった。その後の復旧には2日間、一部地域では1週間以上かかり、「米国は超大国なのに送配電網は発展途上国並み」という批判が起きる。このようにアメリカでは、電力自由化などの影響により、安定的な供給に課題があった。そこでITの双方向性を利用し安定的供給の一助とする考え方として、スマートグリッドが提案される。


 オバマ政権になると、2009年2月「米国再生・再投資法」が定められ、環境・エネルギー分野に計580億ドルもの予算が割り当てられた。こうしてリーマンショック以降、景気減速に悩まされ続けてきた米国では、太陽光発電や余剰電力を回せる電気自動車など、幅広い産業が参加できるスマートグリッドを、景気対策の一環としても進めている。


日本におけるスマートグリッド


 一方、強固な電力網が築かれている日本では、安定的な供給が既に実現しており、スマートグリッドに対する熱はほとんどなかった。2006年には送電線がクレーン船のアームにより切断され、関東の100万世帯以上に電力が供給されなくなるという大規模な停電が起こるものの、4時間余りで全面復旧している。そもそも年間1時間近い停電が起きるアメリカと比較して、日本の停電時間は年間平均で10数分。安定性を求める「スマートグリッド」へ移行する理由がなかった。


 しかし二酸化炭素排出量の削減や環境問題、化石資源の枯渇などの対処方法として太陽光、風力といった「再生可能エネルギー」が舞台に上がると、日本においてもスマートグリッドにスポットライトが当たるようになる。


 再生可能エネルギーは、資源がほぼ無限にあるというメリットがあるが、天候などに左右され出力が不安定というデメリットもある。出力低下時の不足分は、なんらかの別の発電手段で補う必要があり、これとスマートグリッドによるリアルタイムな需要把握がマッチしたのだ。2011年東日本大震災が起こり、津波被害などによる計画停電や「節電」が注目を浴びると、節電技術という側面も持っていたスマートグリッドはさらに注目を集めるようになる。

標的型と従来型の主な違い
スマートグリッドに関連してくる製品・業界の一例

取り組みと課題点


 経済産業省は2009年に「次世代エネルギー・社会システム協議会」を設置。協議会の下では、スマートメーター、次世代配送電システム、スマートコミュニティ、蓄電池、次世代自動車など、スマートグリッドに関連する多数の検討会・ワーキンググループが協議を行っている。また2010年には、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が「スマートコミュニティアライアンス」を設立して、官民間でスマート関連の技術に関する国際標準化、研究などを進めている。


 スマートグリッドは米国では景気対策として位置付けられ、日本においても政府が新成長戦略の柱として「環境・エネルギー大国戦略」を打ち出している。そのため、喧伝されている「節電」「省エネ」よりは、「蓄電池」「太陽光発電」「電気自動車」など幅広い分野を巻き込んだ「新市場」という側面が強い。市場側からの視線は熱いものの、肝心の消費者側がどの程度理解しているのか、そもそも本当に消費者にメリットがあるのか、浸透していないという課題点もある。

(井上宇紀)

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