キーワード解説

特集などに出てきた重要語句を分かりやすく解説

2011/10/24

自治体クラウド

概要

 自治体クラウドとは、地方自治体が使用している業務システムなどを、データセンターに預けてクラウド上でサービスを受ける環境のこと。自治体を所管する総務省を始め、各自治体で取り組みがなされている。


 地方自治体で電子申請などの情報システムを構築するに当たっては、人口数に関わらず、ある程度の規模を必要とする。しかし、小規模な自治体では情報システムに詳しい専任の職員がいないため、大手ベンダーの囲い込みが進み、コストが割高になっている。


 こうした問題を解消するため、2009年に総務省主導で進められたのが、6道府県78市町村自治体が参加した「自治体クラウド」の実証実験事業だ。


総務省の自治体クラウド 主な実証項目(総務省の資料を参考に作成)
総務省の自治体クラウド 主な実証項目(総務省の資料を参考に作成)

経緯


 総務省の動きを見ると、「自治体クラウド」に至る経緯は、2001年に立ち上げた「電子政府・電子自治体推進プログラム」にさかのぼる。庁内LANや1人1台のPC整備、自治体同士を結ぶネットワーク整備、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)整備などを目標に掲げ、平たく言えば「自治体内の業務をIT化する」というものだった。


 しかし、小規模自治体単独ではシステム構築が財政等の理由で困難なことから、2003年には「電子自治体推進指針」を打ち出し、複数の自治体によるシステムの共同アウトソーシングを提唱した。


 その後2008年のリーマンショックを経て、総務省は2009年度に20億円の予算を計上する。これを元手に、3か所のデータセンターを経由した作業がスムーズに進められ、「自治体クラウド」の実現へ向け、各自治体に呼び掛けて開発実証事業を行った。この結果は、2011年9月7日に公表されている(総務省の自治体クラウド開発実証事業 調査研究報告書)。


 総務省関係者によれば、全国に約1700ある自治体の取り組みにもつながるため、大手ベンダーも逆に「自治体クラウド」をビジネスチャンスと捉えて動いているという。


今後


 総務省の取り組みの一方で、広域連合や町村会などで独自に業務システムの共有を進めている自治体もある。山形県の米沢市を始めとする3市4町で構成される置賜広域事務組合では、住基、税、国民健康保険、介護、福祉、財務会計など12業務のクラウド化を2009年4月から始めた。コスト効果は、クラウド移行前の2006年の年間5億400万円から、3億600万円、約40%近い削減が見込まれている。


 また、長崎県は「システムの発注方法自体から見直す」という発想を経て、総務省のプランとは別に、独自に「自治体クラウド」を同県の市町村や他県へサービス提供している。


 「自治体クラウド」に関する動きはここ数年で活発になっており、共同化による削減効果も目に見える形で出てくるようになった。ただ、システムの共同化を進める自治体の中には、契約を結んでいる既存システムの期間が継続しているところもある。このため現在示されている削減額は、ほとんどの自治体が「見込み額」となっている。本格的な削減が期待されるのは、システムの更新を待ってからとなる。

(中西 啓)

「自治体クラウド」が出てきた記事

【特集】変わる地方自治体のIT

【関連カテゴリ】

クラウドIT政策