犯罪捜査におけるデジタル・フォレンジックの必要性とは:HH News & Reports:ハミングヘッズ

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舟橋信 NTTデータ アイ顧問に聞く「犯罪捜査におけるデジタル・フォレンジックの必要性とは」

NTTデータ アイ顧問
舟橋 信
「犯罪捜査におけるデジタル・フォレンジックの必要性とは」

目次
  1. 自身とデジタル・フォレンジックとの関わり
  2. 電子的証拠を保存しておくことの必要性
  3. 日本の課題
  4. 今後のビジョン

犯罪捜査の現場でデジタル・フォレンジックは有効に使われている。その歴史も交えながら、現場で使われることの必要性や企業での利用方法について株式会社NTTデータ アイの顧問でNPOデジタル・フォレンジック研究会の理事でもある舟橋信氏にお話をうかがった。



舟橋信 NTTデータ アイ顧問
舟橋信 NTTデータ アイ顧問

自身とデジタル・フォレンジックとの関わり

―舟橋さんのデジタル・フォレンジックとの関わりについてお聞かせください。

舟橋氏 今まで関わったもので最も古いのは、1984年の春に、某県警で運転免許証の不正交付事件が発生し、汎用コンピュータ(メインフレーム)のログ分析から、登録データの改ざん状況について調査を行ったのが最初の経験です。当時は、デジタル・フォレンジックという言葉は使われておりませんでした。

―言葉が使われ始めたのはいつくらいからでしょうか。

舟橋氏 国内でデジタル・フォレンジックという言葉を最初に使い始めたのは、デジタル・フォレンジック研究会の創設を検討していた頃です。2004年5月に警察向けにデジタル・フォレンジック・セミナーを国内で初めて開催したのがきっかけでした。
 その時、講師としてお招きしたのは、テキサス大学の教授をされていた方で、当時は退職されて、デジタル・フォレンジックの調査会社を経営していました。その方は エンロンの粉飾決算の不正会計問題が発覚した時に、捜査側に立って、フォレンジック調査された方だったのです。
 この方とお話をしていてわかったのは、この分野における日本と外国の取り組みの違いです。米国やヨーロッパでは、「産官学」が連携してデジタル・フォレンジックの研究や、ツールの開発に取り組んでおります。日本の場合は、これまで警察を除けば、デジタル・フォレンジックの研究やツールの開発にほとんど関心が示されてこなかったのが実情です。

 1980年代半ばまでに、企業にメインフレームや、オフィスコンピュータが、普及してきました。それに伴って、犯罪捜査において電子的証拠、刑法では電磁的記録というのですが、その電子的証拠の解析が盛んに行われるようになったのです。
 例を挙げると、銀行員の内部犯罪があります。架空の銀行口座を作って、そこに振り込み、ATMから現金をおろすという手段ですが、このケースは当時から多かったのです。

 そして1995年に地下鉄サリン事件が発生しました。これは日本のデジタル・フォレンジック発展のきっかけとなるターニングポイントになったと思います。というのもオウム真理教の関連施設を捜索する際に、PCも押収しており、電子的証拠録の解析が行われました。残念ながら当時は、効率的に解析できるフォレンジック・ツールは開発されておりませんでした。
 地下鉄サリン事件を受けて1995年に警察法の一部改正が行われ、警察庁の所掌事務として電磁的記録の解析が盛り込まれました。
 ライブドア事件の際には、デジタル・フォレンジックについて関心が高まり、雑誌等で取り上げられたところです。

電子的証拠を保存しておくことの必要性 

―今では電子的証拠を保存しておくことの必要性に対する認識が高まってきましたね。

舟橋氏 はい。デジタル・フォレンジック技術を使うのは、サイバー犯罪の場合だけではなく、一般犯罪の場合も多いのです。殺人事件の現場や企業犯罪などの関係場所にPCなどがあれば、それらを押収します。また、事件関係者が携帯電話を所持していれば、それも押収対象となり、電子的証拠の解析を行います。事件現場で指紋を採取するように、事件に関連するPC等の電子的証拠を解析するというのが当然のようになってきています。それは、身の回りを見渡してもわかりますが、連絡には電子メールや携帯メールが使用され、文書の大半もワープロソフト等で作成されております。このように、事件に関係する情報の大半は、電子化されていることから、電子的証拠の解析が重要になってきたのです。
図1 サイバー犯罪相談件数(都道府県警察) (出典:警察庁ホームページ)
図表1 サイバー犯罪相談件数(都道府県警察)
(出典:警察庁ホームページ) (クリックすると拡大します。)
こちらの資料(図表1参照)を見ると、サイバー犯罪相談件数は2007年の1年間でおよそ7万件です。これが実際に全国の警察機関に来られて、相談を受け付けた件数なのです。しかしこれは氷山の一角だと考えています。

―企業での電子的証拠の活用事例は、実際にどんなものがあるのでしょうか。


舟橋氏 企業での活用事例というと、やはり情報漏洩に関する事件で、不正行為の事実関係や該当者を明確にするためにデジタル・フォレンジック技術を用いた調査が行われています。代表的な例は、2007年の2月に報道された事件です。ある企業から、13万件あまりの営業秘密に該当するデータが海外に流出したのではないかと疑われた事件です。容疑者とされたのは同社の従業員ですが、会社の貸与PCにデータをダウンロードして自宅に持ち帰ったことから、貸与PCの横領罪で逮捕されましたが、当該PCを返還していたことから、起訴猶予処分で釈放され、懲戒解雇されました。
企業での活用事例を話す舟橋氏
企業での活用事例を話す舟橋氏

―日本ではまだサイバー犯罪に対して、刑の処罰が軽いのでしょうか。

舟橋氏 例えば不正競争防止法では、会社の営業秘密を不正に取得して「不正の競争の目的」で使用又は開示した場合などは、刑事罰が重いと思います。先ほどの事件の場合は、構成要件に該当せず、不正競争防止法は適用されませんでした。経済産業省においては、こういった事件に対処するため、営業秘密に関する刑事的措置の見直しが行われているところです。

日本の課題

―欧米との比較でみる日本の課題はどんなところでしょうか。

舟橋氏 デジタル・フォレンジックに関しての研究と教育は、米国では、工学系のコンピュータサイエンス学科のあるような大学では盛んに行われております。
 米国の法執行機関や企業などでもこの技術が利用されています。フォレンジック・ツールを開発するベンダー企業は、米国国内だけではなく、世界的にマーケティングを展開しています。産官学と軍が連携しているのです。ヨーロッパも似たような状況です。
 昨年の1月に京都で国際会議を開催したところ、中国の大学からも数件の研究発表が行われ、この分野の研究が進められていることがうかがわれました。日本で研究を行っている大学は、極めて限られています。また、フォレンジック・ツールの開発、製造に関しては、国内だけではマーケットが狭く、ビジネスが成り立たないのが実情ではないかと思います。

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