医療におけるデジタル・フォレンジック導入の必然性とは(前編):HH News & Reports:ハミングヘッズ

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秋山昌範 マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院客員教授に聞く「医療におけるデジタル・フォレンジック導入の必然性とは(前編)」

MIT スローン経営大学院客員教授
秋山 昌範
「医療におけるデジタル・フォレンジック導入の必然性とは(前編)」
~マーケティング理論を適用した医療フォレンジックの可能性~

医療事故が頻発している今日において、デジタル・フォレンジックを医療に導入することは、医療不信を回復するための1つの手段となりうるのだろうか。「デジタル・フォレンジックの医療への導入は絶対必要である」と語る秋山昌範 マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院客員教授にお話をうかがった。


フォレンジックは証拠となるもの

―医療におけるデジタル・フォレンジックの役割とはどういったものなのか、お聞かせください。

秋山昌範 MITスローン経営大学院客員教授
秋山昌範 M ITスローン経営大学院客員教授
秋山氏 フォレンジックは医者と患者の信頼関係を確立するものであって、医療行為の証拠となるものです。いわばトラブルとなったときの保険です。逆にトラブルがあったときにきちんと保険としての役割を果たしてくれるようなフォレンジックでないと、意味がないわけです。

 医療現場へのフォレンジックの導入に対して否定的な意見もありますが、例えば軽井沢に行くことを考えてみてください。軽井沢は東京から行って、初めて東京じゃないとはっきり感じる場所です。軽井沢は東京近郊でありながら非日常感が味わえる美しいリゾート地ですが、もし軽井沢に行くたびに、全員に荷物検査をするような厳重なセキュリティチェックが入るとしたら、面倒になって行きたくなくなりますよね。今のデジタル・フォレンジックは、そういう方向ではないでしょうか。デジタル・フォレンジックが導入されたら現場が大変だと、タイムスタンプが大変だと言われています。しかし、私はデジタル・フォレンジックを説明するときに、「大変ではありません」と、「見えないところで知らないうちに我々を守ってくれるものです」と伝えています。

マーケティング理論から見た信頼のおける医療とは

―なるほど。ところで「信頼のおける医療」とはどういうものなのでしょうか。

秋山氏 例えば癌になったら、告知してほしい、してほしくないという選択肢がありますよね。告知してほしいというのは、ある意味医者が信用できないからです。極論で言えば、全幅の信頼をおける医者であれば、告知の必要は感じないはずです。理想の医療、理想の関係性とはそういうものだと思います。「全部お任せします」と。「先生がベストだという方法でやってください」と思えることなのです。
 患者さんが「私の命を預けます」と、私が目指しているのはそういう医療です。昔の医療とはそういうものでした。それは医療に限らず、多くの産業界がそうだったと思います。ブランド志向があり、この人・この会社は信頼できる。それが大手銀行の破綻や金融ビッグバンで、崩れてきた。

 ブランドといわれているものがインチキをしていたということに、消費者が気づき始めたからだと思います。その大きな要因となったのがやはり、インターネットの登場だと思います。インターネットが普及して初めて、一消費者の意見が広く発信されるようになり、企業も嘘がつけなくなった。ブランドというもののあり方が変わってきたわけです。しかしこういった時代でもエルメスやグッチの信頼は崩れません。それはなぜかというと、信頼のおける商品は絶対にごまかしはしない。また、TUMIという高級かばんがありますが、とても丈夫です。丈夫なだけではなく、シリアルナンバーが付いていて、完全な品質保証と、防犯登録されています。

 そういった高級ブランドのかばんにしても、きちんと商品管理されていて、タグが付いていますよね。高いだけに信頼があるからで、それはすなわち絶対的に自分たちの商品に自信があるということです。そしてそういうものは高くてもみんな買うのです。その保証はどこにあるかというと、ITですよね。

医療の電子化の必要性

―なるほど、様々な場面でIT化が加速していますよね。そういった中、フォレンジックが医療にも活用される必要があるわけでしょうか。

医療における電子化について語る秋山氏
医療における電子化について語る秋山氏
秋山氏 品質の良い医療をすることが大前提で、質の高い医療をしているからこそ、フォレンジックが必要なのだと思います。クオリティがあるところにフォレンジックがないとかみ合わない。何のためのフォレンジックなのかというと、品質を保証するためです。言ったことに責任を持つこと、すなわち「信頼」というものはそんなに甘いものではありません。

 私は医療において一番重要なことはTrust(信頼)だと感じており、どうすれば患者から信頼を得られるかをテーマに、その方法を研究しています。Trustがなぜ必要になってきたかというと、嘘がばれるような世の中になったからです。なぜ、嘘がばれるようになったかというと、実はインターネットとグーグルとWEB2.0です。もうちょっとわかりやすく言うと、ブログや2ちゃんねるです。

 だから今こそデジタル・フォレンジックが注目されるべきなのです。例えば専門家がなりすまして、2ちゃんねるに書き込んでいいのでしょうか。それでは歪んだかたちで世論を誘導することになります。フォレンジックを必要とするためには、まず守るべきものがなければいけません。守るべきものというのは、プライバシーです。
 なぜデジタル・フォレンジックが必要だという話になるかということと、医療の電子化が必要であるということは大前提だと考えています。

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