“場”に設置されたソーシャル空間・デジタルサイネージ
~災害を越えて見えたもの~
中村伊知哉 デジタルサイネージコンソーシアム理事長
2012/8/2  1/3ページ

10年ほど前に「電子看板」という呼び方で利用され始めた「デジタルサイネージ」。現在では様々なディスプレイが街中で見られる様になり、具体的な定義があいまいなっていくと同時に市場規模は拡大の一途をたどっている。

 デジタルサイネージの普及のために業界・識者が勉強会や啓蒙活動などを行う「デジタルサイネージコンソーシアム(DSC)」理事長の中村伊知哉氏に、デジタルサイネージのこれまでとこれからについてお話を伺った。

激変の中のデジタルサイネージ

―デジタルサイネージの現状についてお話下さい

デジタルサイネージコンソーシアム理事長 中村伊知哉氏
デジタルサイネージコンソーシアム理事長 中村伊知哉氏
 

中村氏:最初は「電子看板」と呼ばれており、街角に広告などを表示する“ディスプレイ”がデジタルサイネージの始まりでした。近年では、ネットワークにつながり、ソーシャルメディアともつながって、看板のように屋外だけではなく屋内にも設置されるようになってきています。こうなると、ほかのタブレットやスマートフォンなどのディスプレイとの境目もあいまいになってきていますね。


 私が理事長を務めております「デジタルサイネージコンソーシアム」は2007年に設立されました。当時からデジタルサイネージの特徴は「今だけ、ここだけ、あなただけに見せるメディア」と言われてきましたが、ようやくその使い方が定着してきているように感じます。例えば、駅の中であれば、随所にディスプレイがあり、時間に応じて、コマーシャルや何らかのコンテンツなどが流れるようになっています。


 それだけではなく最近では商業・エンターテイメントの域を出て、学校や病院などのような公共空間でも当たり前のようにディスプレイが普及していて、学校ならば就職情報など、その場所に適した情報の共有手段として使われるようになってきています。さらには公共空間も越えて、オフィスのように特定の人が使うところや、場合によっては家庭でも、場所に紐づいて適した情報を提供するものを「デジタルサイネージ」と呼ぶのが最近の流れです。


―“家庭の中”ですか? 具体的にはどのような形になるのでしょうか?

中村氏:例えば、インターネットが接続されているモニターに、普段は時計とかカレンダーが表示されていて、必要に応じて「近所のスーパーでのタイムセールス」とか「役場からのお知らせ」が届くような形です。これはテレビでもPCでも携帯でもなく「デジタルサイネージ」としか呼びようのないものです。


 ここでの携帯電話やPC、タブレットPCと「デジタルサイネージ」の違いは「ずっとスイッチが入っているか、どうか」くらいでしょうか。5年前にデジタルサイネージが「電子看板」と狭い定義で呼ばれていた頃と比較すると、かなりの広がりをみせてきて、多様になり、そして浸透してきています。


―“5年前”と違ってきた理由はなんでしょうか?

中村氏:5年前であれば、デジタルサイネージと言われても「大きな液晶端末」くらいしかありませんでした。しかし最近ではタブレット端末とかスマートフォンとか、いろいろな形のデバイスやスクリーンが出てきました。さらには地デジやブロードバンドネットワークが日本国内で整備されてきましたし、それとソーシャルサービスの台頭もあります。


 メディア業界全体に、サービスを一方的にコンテンツとして流すのではなく「ソーシャル」という潮流が加わる変化の中に、デジタルサイネージもいたわけです。変わったと言うよりは、変化の波に飲み込まれた感じがしますね。

>>3.11大災害の影響は…?

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