震災を越えて「使える」システムを
~“テレイグジスタンス”が目指す社会~
慶大教授・東大名誉教授 舘 暲氏
2012/3/22  1/3ページ

「人が『楽しい』『便利』と思うシステムでなければ、災害の時に役立つものにはならない」―。バーチャルリアリティを専攻する慶応義塾大学大学院の舘暲(すすむ)教授が研究を進める「RPT(再帰性投影技術)」「テレイグジスタンス」は、単なるロボットやラジコンではない。

 こうしたロボット技術が、これからの社会をどのように変えていくのか。現在の研究状況と近未来社会について、舘氏にお話を伺った。

次世代AR技術、「RPT」

慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科 舘暲教授
慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科 舘暲教授

―バーチャルリアリティ学を専攻されている舘先生が研究されている分野は、「ユビキタス技術」と捉えていいのでしょうか?

舘氏:そもそもユビキタスとは「同時に、いたるところに存在する、あるいは存在するように思える」という意味で、そういった環境を作ることが我々の研究で目指しているところです。


 その中でAR(拡張現実感)技術については「セカイカメラ」がわかりやすいと思います。iPhoneなどを建物にかざせば、「その建物にどんな店舗が入っているのか」「築年数はどれだけあるか」、などが建物と一緒に出てきますね。物理的な「モノ」と、モノが持っている情報を一致させています。AR技術は「情報がどこにでもある状態」を作り出すものなのです。


 我々が研究しているのは再帰性投影技術(RPT)というもので、新しいAR環境を作ろうとしています。物理的なモノにプロジェクション(投影)することによって、情報とモノを一体化します。例えば、映像や文字などでモノの上に情報が出てくるというものです。カメラであれば、冊子の説明書がなくても「このボタンを押せばいい」という指示が出てきます。


 普段からARのような機器をメガネのように小型化して身につけていれば、道案内や会った人の名前などの情報が、災害時には事故の情報が本人に送られてきて、「どこに逃げればよいか」という情報なども、将来的には与えることができます。


―RPTはどんな分野への応用が期待されるのでしょうか。

舘氏:医療でも活用できます。内視鏡手術や、体の一部分だけを切開して、患部を治療する手術が多く行われていると思いますが、こうした手術では全体が見えにくいのです。RPTを使えば、開腹した時と同じような状態で、体全体を見通しながら手術することが可能となります。


人をユビキタスにする「テレイグジスタンス」

―他にも舘先生は「テレイグジスタンス」という分野も研究してらっしゃいます。

舘氏:これもユビキタス技術なのですが、RPTが「情報をユビキタスにする」技術だとすれば、テレイグジスタンスは「人をユビキタスにする」技術と言えます。自分が行きたい所へ、どこにでも行けるようにする技術です。そこへ行っているのと同じ体験をすることができるよう研究を進めています。


 例えばこうしたインタビューも、私は自宅にいながら、現地には遠隔ロボットがいて、現実にいるのと同じように受け答えをする、ということが可能になります。


 そのためには、視覚も直接その場で、目で見ているのと同じような距離や大きさが保たれていることが必要です。また、相手と共同作業をするには、音や自分の動作も相手に伝わる必要もあります。

>>テレイグジスタンスにはどんな可能性が?

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