特別対談! 津田大介氏×ジョン・キム氏
~ITが日本社会に貢献した年 2011年
2011/12/26  1/3ページ

2011年を思い返してみると、東日本大震災を始め、激動の1年であった。それは「IT」にも当てはまる。TwitterやFacebookなどソーシャルメディアが存在感を増し、ハードウェアもスマートフォンへ急激に移行することで、IT環境は劇的に変化した。

 慶応大学政策・メディア研究科准教授のジョン・キム氏と、ジャーナリストの津田大介氏に、2011年を振り返って、激動の「IT業界」について自由に語っていただいた。

震災を経たソーシャルメディアの変化

―2011年はソーシャルメディアを中心にIT業界は大きく変わりました

津田氏:2011年にソーシャルメディアは大きく変わりました。2011年に登録者がTwitter2000万人、Facebookも1000万人まで増えてきました。


キム氏:ソーシャルメディアを使う利用者が増え、参加している個人が情報を発信し、情報量が増加する。そして、ソーシャルメディアを駆使した津田さんを始めとしたジャーナリストの力が強力になり、巨大なマスメディアと対抗できる基盤が出来上がりつつある。


 状況によってはソーシャルメディアの方がマスメディアよりも迅速性があります。特定の情報に対する深い分析でも、既存のマスメディアが組織的な問題から抱えている限界を超え「公益」のために情報を発信した活動が目立った1年でした。

慶応大学政策・メディア研究科准教授 ジョン・キム氏
慶応大学政策・メディア研究科准教授 ジョン・キム氏

津田氏:個人のジャーナリストはまだマスメディアに到底並べていない。影響力も違います。しかし、活躍できる領域は増えてきていることは間違いないですね。


 東日本大震災のように広域で大きな事件が起きると、テレビや新聞のように尺や紙面の都合があるようなマスメディアではすべてを伝えきれない。例えば、東日本大震災に際して、読売新聞も朝日新聞も100人単位の記者を現地に送っています。しかし100人が取材をしても記事になるのは10か20程度。つまりそれだけの取材をしても8割のものが捨てられてしまうわけです。


 しかし、それを個人のジャーナリストなどによる情報発信が埋めています。新聞やテレビに捨てられる8割の情報がすくい上げられることで、震災の状況や現実もより詳細にわかるでしょう。


 欧米では記者個人がアカウントを取得して、漏れた8割を発信しています。日本の新聞社にそれができないのはマスメディアとして、あるいは組織としての限界を示してしまったと思っています。


キム氏:最大の問題は、すべての情報は誰かにとっては有益な情報になり得るということです。切り捨てられてしまう8割も「誰か」にとっては必要な情報なのに、マスメディアの放送時間や紙面の制約で切り捨てられてしまう。これはその情報によって潜在的に救われるはずの 「誰か」が切り捨てられるということを意味します。こうしたマスメディアが埋められなかった部分を、津田さんのような個人のジャーナリストがソーシャルメディアを駆使して穴を埋めたということに意義があります。

ジャーナリスト 津田大介氏
ジャーナリスト 津田大介氏

津田氏:震災時には役割分担が、お互いを浸食しない範囲で出来たのかなと。連携で代表的なのはNHKによるサイマル放送*1ですね。もともと中学生が勝手にNHKをキャプチャしたのをストリーミングしたのが最初でしたが、NHKが動いてオフィシャルに流しました。日本の場合は放送法の縛りで本来サイマル放送は禁止ですが、NHKが総務省にかけあって、特例でサイマルを認めさせたのでしょう。東北地方では、ネットが復活しているもののテレビが復活してない地域が結構ありましたので、NHKのサイマル放送は非常に活躍しました。


 ほかにも、テレビ局は取材力があるので、どこよりも早く避難所を取材します。震災直後、避難所は携帯電話の通信網も通じないような状態なので、避難所で撮影している映像が避難所外にいる家族や親類などにとって唯一の安否確認になるのです。だから、テレビ局はいち早く現場にたどり着いて、撮っている映像をすべてオンデマンドで公開すれば、より公益にかないますよね。


キム氏:なるほど。先ほどの捨てられる8割をYouTubeなどで公開すれば、これまで捨てられていた「誰か」が救われると。


津田氏:今回も震災から10日くらい経ってオンデマンドの公開は始めたのですが、震災から1週間ほどで携帯電話が通じるようになっていたので、安否確認としては、そこまで機能しなかった。ただ連携の前例が出てきたので、次に大規模な災害が起きた時には、すぐ当日にYouTubeに動画が上がるように対応ができるでしょう。

>>ソーシャルメディアの台頭にマスメディアは?

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