特集 近づくマイナンバーの足音 「1年後」と「3年後」への準備・検討状況

2015/1/8  1/3ページ

2016年1月から運用が始まる「マイナンバー」制度。今年10月には、個人と法人に割り当てられる番号の付番・通知が開始される。過去の大規模な制度改正では、「後期高齢者医療制度」など国民の間に大きな混乱を招いたケースがあったが、今回のマイナンバー制度も「まだ周知が足りていない」(政府)。さらに、マイナンバーと同じく「行政の効率化」と「国民の利便性向上」を掲げていた「住民基本台帳カード」の交付率は5%にとどまっており、マイナンバー制度で交付される「個人番号カード」の普及の行方も懸念される。

 産業界からは、マイナンバー制度の導入効果は年間1兆1500億円に及ぶとの試算が出されるなど期待も大きいが、運用開始まで1年を切り、利用範囲拡大の検討や地方自治体の準備はどうなっているのだろうか。

制度概要と検討の歴史


 「マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)」は、国民1人ひとりに12ケタの番号を付与し、複数の機関が所有する個人情報を効率的に管理するための共通番号(マイナンバー)として活用するもの。行政手続きの際にマイナンバーを活用すれば、書類提出などの作業を簡素にすることができる。制度開始時は、「社会保障」「税」「災害対策」の3分野の行政手続きがその対象だ。今後の利用範囲拡大については、政府で検討が行われている。


 政府はマイナンバー制度により期待される効果として、1.行政の効率化、2.国民の利便性の向上、3.公平・公正な社会の実現―の3つを挙げている。

政府がマイナンバーに期待する効果(クリックすると拡大します)
政府がマイナンバーに期待する効果(クリックすると拡大します)

 マイナンバーが記載される個人番号カードの券面には、番号のほかに氏名や住所、生年月日、性別が記載され、持ち主の写真も掲載される。個人番号カードは身分証明書として利用できるほか、カードに搭載されるICチップの電子証明書を利用した税などの電子申請も行うことができる。なお、マイナンバー制度の施行に伴い、「住民基本台帳カード」(住基カード)の新規交付は終了となるが、交付終了前に発行された住基カードは引き続き有効期間中は利用が可能だ。


 既に、行政上利用されている番号制度はいくつかあり、税務署単位で設定される納税者番号や基礎年金番号などがある。しかし、例えば2008年に麻生太郎内閣が実施した経済対策「定額給付金」では、全国民の所得を把握することができなかったために所得制限を行うことができず、給付経費が莫大になった。また、基礎年金番号では第1次安倍内閣の2007年、管理台帳に裏付けがない番号を使っていたために年金の納付記録が行方不明になる「消えた年金問題」が発覚した。


 これらをきっかけに、政府・与野党で番号制度を議論する機運が盛り上がった。2009年に行われた衆議院選挙では、民主、自民各党がマニフェストで、番号制度の導入を掲げた。その後、政権の座についた民主党が検討を本格化。再び政権が自民党に代わっても検討は続き、国会提出の段階まで進んだ法案が廃案になるなどもありながら、2013年の通常国会で関連法案が可決、成立。2016年1月からの制度開始に向けて動き出すこととなった。


導入効果は1兆円超


 政府が強調するマイナンバー制度の導入による効果に対して、民間からも導入効果の試算などが公表されている。産業界では、公益財団法人日本生産性本部が事務局を務めた協議会が2012年に、経済効果は年間1兆1500億円に上るとの試算を発表している。


 この試算は主に、コスト削減効果が想定できるものに焦点を当てるとともに、民間等へのマイナンバーの利用範囲拡大を前提にして算出されたものだ。それによると、社会保障や税手続きなどの事務効率化による「行政分野」の経済効果は年間約3000億円。医療機関や電気、ガスなどの「準公的分野」の手続きでは約6000億円、官民をわたる手続きなど「民間分野」では約2500億円としている。


 さらに日本生産性本部は2013年に、コスト削減効果の試算を前提に経済波及効果の見込み額も算出。総務省の「産業連関表」や内閣府の「経済・財政の中長期試算」などを用い、年間の経済波及効果見込み額は2兆7858億円に及ぶと発表した。

マイナンバー導入の経済効果とメリット
(日本生産性本部が事務局を務めた協議会の資料を基に作成)
マイナンバー導入の経済効果とメリット (日本生産性本部が事務局を務めた協議会の資料を基に作成)

 これらの経済効果では、引っ越しの際に生じる住所変更届などの各種手続きを一括で行うことができるサービスや、退職時の年金・健康保険切り替え手続きなどを一度に完結できるサービスが想定されている。マイナンバー制度をこのようなサービスや経済効果に結び付けるために欠かせないのが、利用範囲の拡大だ。関連法には「法施行後3年を目途として、個人番号の利用範囲の拡大について検討」を行うことなどが明記されている。

>>利用範囲拡大に向けた検討状況は?

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