100年残せるバックアップは可能か?
クラウドデータ消失から考える未来のデータ保存
2012/9/3  1/3ページ

2012年6月に起きたファーストサーバ社が所有するクラウドサーバ内のデータが消失した事件。この事件が引き起こした混乱は、企業においてデジタルデータによる保存がいかに重要な位置を占めているか、そしてデジタルによるデータが保存性においていかに危うい側面を持っているかということを世間に知らしめた。はたして、デジタルに安心してデータを預けられる日は来るのか? デジタルデータの保存技術や長期的な保存・運用に迫りながら、「100年残せるバックアップは可能かどうか」について考えてみた。

クラウドデータ、消失


 2012年6月20日17時ごろ、レンタルサーバ会社のファーストサーバ(大阪市)がクラウドサービスで預かっていたデータを過失で破壊してしまう事件が発生した。同社のサービスを元に業務を運営していた企業も数多くあり、企業のウェブサイトや業務関連のメール、顧客情報やスケジュールなど多様なデータが失われたと報道は伝えている。


 ファーストサーバ社は、6月23日にはデータ普及を行うことは不可能と判断。そのため、障害のあったおよそ5700の顧客全てが、「自力」でウェブサイトを再構築するなどの作業を迫られることになった。手元に「バックアップデータ」があった企業は順次、復旧を果たしたが、多くの企業は復旧のメドが立たなくなった。「バックアップデータ」を保存していたかどうかが明暗を分けた。

東京大学大学院情報学環教授 馬場章氏
東京大学大学院情報学環教授 馬場章氏

本格的な運用・活用の時代に入ったデジタルデータ


 ファーストサーバ社の事件は「企業や組織がデジタルデータによるデータ保存に強く依存している」という現状を印象付けた。


 「デジタルデータの本格的な運用・活用の時代に入ったことを印象付けている」と語るのは、東京大学大学院情報学環の馬場章教授。以前は、デジタルデータはあくまで紙のデータの複製物という位置づけだった。しかし、現在でははじめからデジタルデータとして作られる『ボーンデジタル』のデータが激増し、合わせてデータの保存=デジタルによる保存という意識が定着してきた。


 こうして、デジタル技術によるデータの保存が本格的になったことと並行して、デジタルデータを保存する技術は驚くほどの進化を遂げてきた。記録媒体の1つであるハードディスク(HDD)を例にあげると、1952年から56年にかけてIBMサンノゼ研究所の研究チームが開発した最初のディスクドライブ「RAMAC」は、大型冷蔵庫ほどの大きさで、24インチもの大きさのディスクが50枚並んでいるが、わずか5MB程度の情報しか記憶できなかった。


 「冷蔵庫サイズ」から始まったHDDは、記憶容量・サイズともに日々進化を続けた。1991年に12MBだった2.5インチのHDDは、15年後の2006年には200GBとなっている。この間の伸びは約1万7000倍であり、驚異的な伸びを示していた。

>>HDDの進歩と記録媒体の寿命とは?

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