2012年、波乱の電子書籍
出版・書店・取次の未来は?
2012/4/16  1/3ページ

 ボイジャー社の萩野正昭氏が1990年代を振り返り、「未知の荒野」と例えた電子出版(日本電子書籍出版協会編『電子出版クロクニル』より)。

 現在、iPadやキンドル、スマートフォンなど、電子書籍を取り巻く環境は確実に整ってきている。「本のデジタル化」がもたらすもの、そしてこれから私たちが手に取る書籍の形はどうなるのか。本を取り巻く業界関係者へ話を聞いた。

電子書籍とは?


 インプレスR&Dが2011年7月に発売した『電子書籍ビジネスに関する調査報告書』によれば、2010年度の電子書籍市場規模は650億円、電子雑誌市場は6億円と推計している。前年(2009年度)比で13.2%増加している。同社では2015年の電子書籍・電子雑誌の市場規模を2200億円程度と予測している。

印刷博物館の企画「What’s 電子書籍」の様子
印刷博物館の企画「What’s 電子書籍」の様子

 そもそも電子書籍とは何なのか? 凸版印刷の大和泰之氏は「単に紙の本をデジタルにする、ということもありますが、スマートデバイスは『触って動かす』ものがほとんどです。ですので、ユーザからは『もっと機能がほしい』という声もあがっています」と語る。


 現在出されている電子書籍も、星座の位置を360度触って楽しめる天体観測図鑑や、触ると草木が動いて中からキャラクターが出てくる絵本など、「デジタル」であることを最大限生かしたものがある。


 印刷会社である凸版印刷も、2011年にインテルと共同で電子書籍サービス会社「Book Live」を設立。電子書籍ストアの運営を行うほか、印刷物コンテンツと電子出版コンテンツの同時制作ラインのサービス提供なども行っている。


動き出す書店

TSUTAYA.comの「eBOOK+」販売サイト
TSUTAYA.comの「eBOOK+」販売サイト

 印刷会社がソリューションを提供する一方、本と読者を直に結びつける「本屋」も黙ってはいない。レンタルショップや書籍販売店「TSUTAYA」を全国に約1400展開しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、グループ会社TSUTAYA.comで2011年から「電子書店」となる「TSUTAYA.com eBOOKs」をスタートさせた。2012年中にはiOSを含め、ほとんどの端末への対応が整うという。


「e-BOOK+」の戦略について語るTSUTAYA.comの元木忍氏
「eBOOK+」の戦略について語るTSUTAYA.comの元木忍氏

 加えてTSUTAYA.comでは、電子書籍向けの「eBOOK+」というサービスを始めている。通常の電子書籍に加えて映像や音楽も楽しめる、というものだ。CCCが独自にコンテンツの企画・立案を行っている。


 ラインナップを見ると、韓流ユニット「INFINITE」の日本デビューイベントの映像がついたフォトブックや、人気ゲーム「バイオハザード」とアイドルグループ「SUPER☆GiRLS」がコラボレーションした無料コンテンツ配信などがある。単なる「電子書籍の販売」の枠を超えたプロジェクトになっているが、その狙いは何なのか?


 「『出版社を無視して作り始めた』と皆さん言われますが(笑)、そうではありません」と、TSUTAYA eBOOKs Unit Leaderの元木忍氏は話す。「私たちの役割は、あくまでもユーザに本を届けること。『eBOOK+』は1つの見本で、出版社さんに対する電子書籍のあり方の提案です」(元木氏)。


 こうした取り組みの背景には、TSUTAYA側の新しい形態の電子書籍販売への提案以外にも、電子書籍に対する出版社の対応がある。出版社によって、電子書籍のフォーマットがバラバラであるという。「売る側では対応しきれません。そろそろ統一してもいいのではないでしょうか、と思っています」というのが本音のようだ。

>>電子書籍の台頭で気になる「取次店」

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