変わる地方自治体のIT
クラウド、Facebook…生き残りを懸けたIT政策
2011/10/17  1/3ページ

島田洋七氏の著作『佐賀のがばいばあちゃん』の舞台で有名な佐賀県武雄市。2011年8月1日、同市はWEBページをFacebookへ全面移行した。行政のWEBページのほぼ全てをSNS(ソーシャルネットワークサービス)に収めるという思い切った政策は、全国の注目を集める。

 地方自治体は2008年のリーマンショック以来、押し並べて税収減に悩まされ、コストカットを迫られている。シビアな財政状況の中で注目されているのが情報システム部門だ。長年大手ベンダーの囲い込みによって、システム費用の高止まりが問題視されてきたが、ここにきて自治体の動きが活発になっている。

 コスト削減に加え、地元をより活性化させるために、自治体はどのような活動を行っているのか。また、地方自治体を取りまとめる総務省が進める「自治体クラウド」はどのような効果を上げているのか。今回はその動きを追った。

総務省の進める「自治体クラウド」


 情報システム費用の高止まりが問題になっているのは、地方自治体の中でも特に人口の少ない市町村だ。東京都や政令指定都市など財政に比較的余裕がある自治体以外は、職員も少ないうえにITに詳しい人材がほとんどいない。


 そのため、ベンダー企業による囲い込みに拍車がかかり、「同じベンダーでシステム更新するなら2500万円、他社へ切り替えるならデータ移行料に1億円かかる」などと言われる事態も起きているという。


 小規模な自治体に起こりやすいシステム費用の高止まりを解消するため、総務省は「自治体クラウド推進本部」を2010年に立ち上げた。また、総務省主導で6道府県78市町村の自治体が参加した自治体クラウドの開発実証実験も2009年から行われた。自治体の内部の業務である税務処理、年金、住民登録などのシステムをクラウド化し、複数の自治体がシステムを共同利用する、という形が主なものだ。


 この実証実験に参加した大分県・宮崎県では、それぞれの県庁が音頭を取って県内自治体と連携し、パッケージソフトの共同利用をする過程で綿密な打ち合わせを行い、パッケージの追加仕様の件数を極力減らして業務の標準化を行った。25市町村が参加した京都府では、人事給与・ふるさと納税・電子申請などを、仮想化技術を利用して構築し、サーバ台数を約6割削減させた。


クラウド化へ独自に取り組む自治体も


 また、総務省の実証実験とは別に、独自に取り組んだクラウド化によりコスト削減が見込まれているのが神奈川県町村会だ。県内の14町村(合計人口約30万人)が、住民登録や住民税、住基ネットなど17業務を共同利用したところ、現行システムでかかっていた5年間のシステム運用費43億円が、2011年度から5年間で約31.2億円、約30%近くの削減が見込まれている(運用経費、データ移行費、組織運営費を含む)。

西いぶり広域連合の削減効果 出典:西いぶり広域連合HP
西いぶり広域連合の削減効果 出典:西いぶり広域連合HP

 他にも、北海道の道南にある自治体で構成される「西いぶり広域連合」に参加している6市町のうち、室蘭市、登別市、伊達市、壮瞥(そうべつ)町の4市町(合計人口約18万人)では、2008年から住民記録、印鑑登録などの計68業務システムを共同利用している。2007年度から2012年度までの6年間で、10億円近くのコスト削減を試算している。


 「実証実験の段階ですが、システムの共同利用などの取り組みにより、金額にしておおよそ3~4割ほどの削減率を見込んでいます」(総務省地域情報課の山形氏)という。


 こうしたシステムの共同利用は、複数の自治体が集まるためにどこかの自治体の首長がリーダーシップを取らないとなかなか進まないという。「神奈川県町村会では、開成町の町長が積極的にリードしていました。また、大分・宮崎両県の実証実験では県庁が各市町村の調整役になっていました」(総務省・山形氏)。

>>発注側の体質から変えた長崎県庁のモデル

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