Editor’s note 取材や日常生活で記者が感じたことをお伝えします

2015/1/8

混乱は現場で 国策に対する国の姿勢

 「マイナンバー制度に備えて何をすべきかを把握している中小企業は2割未満」―。IT市場専門の調査会社である株式会社ノークリサーチが2014年10月に発表した調査結果です。この調査は、年商500億円未満の民間企業1000社を対象に、2014年7月に実施されました。

 さらに調査結果をみると、制度施行に備えて「一連の準備を終えるべきと考える期限」については、「まったく見当がつかない」との回答が6割以上に上っていました。政府は企業や個人からの問い合わせに対応するためのコールセンターを設置。日本語だけでなく、英語での問い合わせに対応できる窓口も開設するなどしています。

 今回の特集はマイナンバー(社会保障・税番号)制度について取材しました。この制度が始まる2016年1月は刻々と迫っています。しかし、上記の調査結果は、マイナンバーは法律で実施が決められている大規模な制度にも関わらず、8割以上の中小企業が「何をすべきか」を把握していないことを明らかにしました。このことからは、制度の広報・周知をより徹底して行う必要性が読み取れます。

 政府は、前述したコールセンターや47都道府県でのシンポジウムなどで制度の周知を行っていますが、「まだ認知度は非常に低い」(政府)状況です。国は国民を巻き込んで制度への関心を高めるため、広報用ロゴマーク(「マイナちゃん」)の愛称を公募で決定しました。「マイナンバー」の名称も公募によるものです。

 ポスターを配布するなど政府は国民の直接の窓口となる各自治体にも広報への協力を求めています。しかし、「国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するための社会基盤(インフラ)」を掲げているこの制度はそもそも国策です。「後期高齢者医療制度」のように過去に大きな制度改正で混乱を招いていることに鑑みて、取材に対して、既に公表されている参考資料をただ提供するだけで「回答」とするのではなく、より丁寧に説明責任を果たしていく姿勢を政府自らが示すべきでしょう。

 広報ポスターを公表してから2カ月が経過しても、ポスターの現物が届いていない「現場」の市町村がある。国がこのような初歩的な失態を演じていては、制度開始を前にして不安が募るばかりです。

(高橋 慧)