寄稿
国際標準に挑む日本発電子認証
伊賀洋一 ISOTC247国内審議委員会委員長
2012/5/7  1/2ページ

【第1回】問題視される電子部品の模倣品

伊賀洋一氏 伊賀洋一氏
ISOTC247国内審議委員会、SEMITRC委員会委員長。1952 年生まれ。NECを経て、ルネサスエレクトロニクス品質保証統括部 企業統合 シニアエキスパート。SEMIトレ-サビリティ委員会委員長、JEITA半導体部会信頼性小委員会サブコミッティ認定WG主査を歴任。現在、日本情報経済社会推進協会(財)JIPDEC主席研究員を兼ねる。

日本の半導体業界が推し進める製品IDを用いた模倣品対策と国際標準化。しかし、欧州や米国・オバマ政権も自国規格を「国際標準」へと押し上げようとする動きを見せており……。世界的に深刻化する部品模倣品の現状に迫りつつ、国際社会の中で日本はどのような対策をしていく必要があるのか、国際標準化を進めるISOTC247国内審議委員会やSEMITRC委員会で委員長を務める伊賀洋一氏に解説していただいた。

日本が進める国際標準化

 我々が所属する半導体業界では製品IDをつかって、模倣品対策を行っている。具体的にはSEMI*1の半導体のトレーサビリティ/セキュリティ技術を長年にわたって標準化してきた。最新の仕様である「T20」では、第三者認証サービスの仕組みを利用している。政府が認めた第三者認証機関が固有のID を発行し、半導体メーカーは、このID を製品に付与するとともに、ID と製品情報をヒモ付けしたデータベースを第三者機関に渡す。これにより、半導体製品の購入者はID を第三者機関に問い合わせることで、製品の真贋を確認できるといった仕組みだ。


 そもそも模倣品による被害は企業にとって大きな痛手となる。製造者の市場の機会喪失はもちろん、ブランドイメージが傷つけられ、製造物責任を巡るトラブルが発生する。自動車や飛行機に関連するものとなれば、人の命に関わる重大な危険がはらむのは言うまでもない。

米国政府法律制定

 こうして進めている製品IDをつかった模倣品対策とその国際標準化――しかしこのたび我々の所属する半導体業界のみならず、あらゆる業界に関わる重大な発表が行われた。オバマ大統領が2012年1月の一般教書演説の中で今年の重要案件の1つとして国防省の中に新たな組織を設け電子部品を含む「模倣品対策強化施策*2」を構築すると明言。これに平行して昨年度末に2012年度の新規法律をサインし、実行に移している。


 すでに模倣品による被害は米国でも深刻な問題だ。国防総省のオライリー・ミサイル防衛局長は、「ミサイル落下(最終)段階で迎撃するTHAAD(落下段階高々度迎撃ミサイル)などに約1300個の偽物部品がみつかり、交換などで約400万ドル(約3億1千万円)の費用が生じた」と報告している。また米政府監査院(GAO)は、架空の会社を使って某国業者から購入した電子部品7つを検査したところ、「本物は1 つもなかった」と発表。輸入電子部品に対する検査制度と部品企業を認証する制度の創設を盛り込むとともに、「偽造部品の交換費用を納入企業が負担する仕組みの導入を目指す考え」を示している。

模倣品販売額と件数の関係
(出典:米国商務省、技術評価局、エレクトロニクス模倣品調査2009年11月)
模倣品販売額と件数の関係
(出典:米国商務省、技術評価局、エレクトロニクス模倣品調査2009年11月)

 これは将来国防省だけにとどまらず、電子部品以外、生命が関わる全ての資産に関係してくると理解すべきだ。直接、または間接代理納入、材料、設備、データといったものに関わってくる。このことから日本のビジネスにとっても産業障壁の観点で相当影響すると考えてよいだろう。

>>問題視されている部品模倣品の現状とは?

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