Bookshelf ~今月の本

『火事場の仕事力』

火事場の仕事力_著:ゆでたまご・嶋田隆司

著:ゆでたまご・嶋田隆司
ワニブックス

\760/192ページ
発売日:2012年4月25日

2012/7/12

30代、40代男性のヒーロー「キン肉マン」原作者が贈る“エール”


 「へのつっぱりはいらんですよ!」このフレーズだけでピンとくる読者も多いだろう1979年から少年ジャンプで連載を開始した漫画「キン肉マン」。とにかく勢いのある話と、王道的な友情、そしてコテコテのギャグが気持ちよく織り交ざった80年代を代表する人気漫画の1つだ。漫画作者の「ゆでたまご」は、タッグネーム…ならぬ作画の中井義則氏とストーリー担当の嶋田隆司氏の2人のペンネーム。

 そのストーリー担当の嶋田氏がこれまでの30年以上の漫画作家人生から得た教訓をまとめたものが本書『火事場の仕事力だ。「火事場の~」はご存知の通り漫画作中の主人公が追い詰められたときに発揮する能力「火事場のクソ力」のオマージュだろう。「キン肉マン」の作風から思い起こされる人柄そのものの嶋田氏が、まさに「火事場のクソ力」を発揮して仕事(=漫画)を作り上げてきた秘訣が本書にぎっしり詰まっている。

 人生山あり谷ありというが、人気漫画の原作者である嶋田氏も「底」を味わったようだ。1988年に週刊少年ジャンプでの連載が終了し、1997年に週刊プレイボーイで「キン肉マンⅡ世」の連載を始めるまでヒット作に恵まれなかった。ファンのあいだでは「暗黒期」とも呼ばれるその期間、どう過ごして、どう這い上がったのか? ファンとしても原作者の“息遣い”や“人となり”を強く感じられる同書は貴重な1冊だが、壁を乗り越えてきた嶋田氏の「心の有り様」は純粋に仕事術の本としても興味深い。

 何か仕事につまずいてしまったとき、手にとって欲しい。ページをめくってみると、本のあちこちに散りばめられた嶋田氏の言葉に元気づけられ…いや「火事場のクソ力」が湧いてくることだろう。

(井上宇紀)