Bookshelf ~今月の本

『酔いどれ小籐次留書 祝言日和』

酔いどれ小籐次留書 祝言日和_著:佐伯泰英

著:佐伯泰英
幻冬舎

\630/342ページ
発売日:2012年2月6日

2012/4/26

シリーズで350万部を誇る、庶民の味方の時代小説


 江戸時代、砥ぎ屋として長屋に暮らす主人公の「小籐次」は5尺1寸(約153cm)と小柄で“不細工”という初老の男。しかし、元は豊後森藩に仕えた武士で、船の上での実践を踏まえた剣術、来島水軍流の達人でもある。彼の腕を頼りに、幕府の御用などもこなす「市井のヒーロー」だ。

 本書はシリーズ最新作。砥ぎの仕事で世話になっている紙問屋・久慈屋の跡取り娘と番頭の結婚を間近に控えた夏。小籐次は同心からの頼まれごとを受けるが、幕府を巻き込む事件に発展する…。

 颯爽と描かれる殺陣(たて)のシーン、匂いまで伝わってきそうな街並み、登場人物それぞれの人情あふれるやり取りなど、諸々の江戸の情景が眼前に現れるから、ページをめくる手が止まらない。勢いだけでなく、時代考証もきちんとなされているであろう描写もそこかしこに垣間見える。

 1999年に発表した時代小説『密命 見参!寒月霞斬り』がヒットして以降、佐伯氏は時代物のシリーズを矢継ぎ早に刊行する。2012年3月末現在、シリーズ本編だけでも167冊にのぼり、「月刊佐伯」と呼ばれる驚異的な筆の速さを見せる。

 また、佐伯氏の時代小説は全て文庫版からのリリース、というのも特徴だ。通常の小説であれば、ハードカバーの単行本が出た後、「廉価版」として文庫が出版される。新作を文庫ですぐに読める、という財布への優しさを考えると、佐伯氏自身が「庶民の味方」と言えるだろう。

(中西 啓)