通信と放送の融合について
―通信と放送の融合についてお考えをお聞かせください。
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小向氏 もともと、インターネットの側から見ると、1990年代の中頃にインターネットが一般の人に使われるようになった頃、インターネットは誰でも見ることができるメディアなのになぜ規制されないのか、という意見がありました。
当時、無法地帯だという言われ方をして議論になったのですが、一方で、インターネットというのは、何者からも自由であるべきだということも強く主張されていました。しかし何をやっても、インターネット上でさえあればリアルな世界で決められたルールで責任を問われないということはありえません。

通信と放送の融合について語る小向氏
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放送メディアに対する規制というのは、どこの国でも他のメディアよりも厳しいものになっています。それはメディアとして強い影響力がある、特別な性格のものだと考えられているからです。90年代半ばの議論で言うと、インターネットからの情報に関しては、放送のような特別な影響力はないだろうということでした。1996年にアメリカで特にインターネットについて、他のメディアより厳しい規制をする通信品位法*2という法律が制定されましたが、表現の自由を不当に制約するとして、裁判で違憲とされています。
デジタル・コンテンツの法規制に関して
―法規制でも通信と放送の融合で、境目がなくなってしまうことに関してどのようにお考えですか。
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小向氏 私の考えですが、通信と放送の融合の特徴は、「情報のデジタル化」と、「伝送経路と端末の多様化」にあると思います。
要するに、端末や伝送路が共有できるようになったので、番組などの「放送コンテンツ」が様々なメディアで流せるようになった、ということです。私は基本的に、メディアや情報発信は規制がないのが常態であり、放送のように、その事業活動に厳しい規制がされる方が、例外だと思っています。
放送というのはとても強い影響力を持っていて、一般人の生活全般に影響を与えうるものです。例えば民放テレビ局は、電波を使って無料の(広告)放送を広く普及した受像機に向かって、放送します。すると多数の人が視聴するため、媒体としての価値が非常に高く、広告収入が集まります。広告収入が集まると、流すコンテンツも非常に良いものをつくることができるという正の循環が、放送の強い影響力に繋がっています。そして、そのような放送を行うことができるのは電波免許を受けているからでもあります。正の循環の元になった「電波」を規制の基準にすることには、現在のところ合理性があります。
融合により伝送経路が変化した場合は、電波免許以外の基準で強い影響力をもっている事業者を客観的に確定して規制をする必要があるかもしれません。しかし、このような基準を客観的かつ合理的に定めることは難しい面があります。また、この場合でも、メディアや情報発信は規制がないのが常態であるとする私の立場からは、できるだけ自由にする領域が大きい方が良いのではないかと考えています。
デジタル・コンテンツの法規制について語る小向氏
―今後のビジョンについて、特にデジタル・フォレンジックについてうかがえますか。
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小向氏 電子情報の証拠としての扱い方のルールを議論することが重要だと思います。きちんとしたルールがあるというのは当然ですが、透明性を確保するための取り組みも必要です。裁判では電子証拠を扱うための技術的な対応も進めなければならなくなるはずです。裁判官の方も個人差がありますが、全体としてITリテラシーがそれほど高いわけではないというのが、一般的な意見です。
裁判員制度が導入されますが、やはり日本人というのは裁判との距離が遠いのです。そこでどれくらい関心を持つかというのは、読めないところがありますが、裁判制度に対する透明性を高めることが、デジタル・フォレンジックに関心を高めることに繋がると思います。
※このインタビューとセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。
注釈
*1:本人確認法
金融機関と顧客が取引する際、金融機関に対し顧客への本人確認を義務づける法律。2008年3月1日以降は、マネーロンダリングやテロ資金対策のため10万円超の現金送金等に本人確認等を義務付けた「犯罪収益移転防止法」に移行している。
*2:通信品位法
「1996年通信法(Telecommunications Act of 1996)」の一部として1996年2月8日、クリントン大統領(当時)の署名により成立。ネットワーク上で下品な情報を未成年に配信することを禁止した。わいせつな情報に関してはどのメディアでも禁止の対象とされているが、放送以外のメディアでは、下品な情報は表現の自由の保障を受けると考えられていた。
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【小向 太郎(こむかい たろう)氏 プロフィール】
【現職】
株式会社情報通信総合研究所上席主任研究員
【業界関連】
特定非営利法人デジタル・フォレンジック研究会理事
有限責任中間法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構理事
日本大学法学部・東洋大学法学部非常勤講師
東京大学大学院情報学環特任研究員
【略歴】
早稲田大学政治経済学部卒業
中央大学大学院法学研究科博士後期課程修了
博士(法学)
【主な著作】
『情報法入門 デジタル・ネットワークの法律』(NTT出版) 2008
『デジタル・フォレンジック事典』(日科技連出版社)共著 2006
『ユビキタスで作る情報社会基盤』(東京大学出版会)共著 2006
『インターネット社会と法(第2版)』(新世社)共著 2006
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(掲載日:2008年12月26日)