会計コラム(連載:第2回)「内部統制で変革すべきは“個人の意識”」: コラム : ハミングヘッズ

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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

公認会計士
松澤大之・著
「捨てる技術で能率アップ
リングノートで
ムダな勉強をやめなさい」
(徳間書店)


公認会計士 松澤大之
会計コラム
監査現場の会計士の視点から、内部統制や会計についてお届けします。

第2回 テーマ 「内部統制で変革すべきは個人の意識

従業員の感情や行動、監査法人が企業に抱く心証…、
“個人の意識”こそ、内部統制の有効性を示す大きなバロメータに

 内部統制対策においては、規程の作成や文書化といった“ハード面”にばかりスポットがあたりがちです。しかし実際は、ルールを運用する側(経営者や従業員)の意識、つまり“ソフト面” の作用も非常に大きく、内部統制の「本来の姿」を捉えるには、こちらを意識することも非常に大切です。また一方、仕組みを監査する側(監査法人)が企業に抱く心証も、この“ソフト面”に左右されやすく、監査自体にも少なからず影響を与えるのです。

統制環境は監査する会計士の
意識に影響を与える
 監査人が企業に赴いた際、まず意識するのは、そこで働く人々の表情や言動といった企業の雰囲気です。内部統制の用語で言えば「統制環境」にあたるのですが、簡単に言うと経営者や従業員の仕事に対する意識の高さや誠実性です。例えば監査対応においても、資料がきちんと用意されているか、対応が丁寧であるかといった社会人として基本的な、人間性ともいえる部分も含まれます。
 そしてこの「統制環境」は、一般の人が想像している以上に監査に大きな影響を与えています。なぜなら、そういった基本的な部分がきちんと出来ている企業では、「不正や業務ミスは起こりにくいだろう」という印象を監査人が抱くからです。

 例えば書類の押印ひとつとっても、隅々まで内容を把握した上での押印と、内容をいい加減にしか見ていない押印では、監査人に与える印象はまるで違ってきます。「この書類に押印する際、どのような順番で項目をチェックしていますか」「どの部分を特に意識して見ていますか」というような質問から、監査人はその担当者の内面や意識を推測します。いい加減な気持ちの人は口ごもり、意識の高い人はスラスラと答えてくれるという風に大きな違いが出てくるからです。
 このように監査人は、単に書類や資料の整合性だけでなく、どのような気持ちで業務に向かっているかといった、従業員の内面的な部分にも意識を向けているのです。

どんなに立派な仕組みも、いい加減な気持ちで運用してしまうと、
期待した結果を生みません。

 内部統制の目的を達成するための「6つの基本的要素」のうち「統制環境」について、意見書には下記のようにあります。

 統制環境とは、組織の気風を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与える(中略)組織の気風は、組織の最高責任者の意向や姿勢を反映したものとなることが多い。組織が保有する価値基準や基本的な制度等は、組織独自の意識や行動を規定し、組織内の者の内部統制に対する考え方に影響を与える。
 統制環境は、他の基本的要素の前提となるとともに、他の基本的要素に影響を与える最も重要な基本的要素である。

出典:企業会計審議会「財務報告に係わる内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係わる内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」より抜粋。

 監査人は企業への“心証”を出発点として監査を行いますから、経営者や従業員に誠実性が感じられる企業では「ここの企業は大丈夫だろう」という信頼感をもって監査にあたります。つまりその反対の状況にある企業では、不信感を頭の片隅に常に抱きつつ、監査をすることになってしまいます。すると、監査範囲を拡大したり、不信感がなければ行わない細かい部分までチェックするといった場面も出てきてしまいます。このように企業と監査人の関係性に悪い影響を与えてしまうのです。

監査人が企業に不信感を持つと、
不信のスパイラルに陥ってしまう
(クリックすると拡大します)
 監査方法では、業務データをサンプルチェックする「試査」という方法があります。これは無作為に検出したサンプルデータを検証することで、全体の良し悪しを判断するといった方法です。
 統制の有効性に応じてサンプルをとる範囲が異なるわけですが、監査人が企業を疑い始めると、監査人も人間ですから、ちょっとした不備でどんどん不信感がつのってしまいます。するとおのずとサンプルの数も範囲も広がり、時には会社のアラ探しになり、その結果また不備が見つかり、そのことでさらに不信感がつのるという悪循環が起こってしまうことも…。
 企業活動も経営者や従業員ひとりひとりの「意識」に頼るところがとても大きく、だからこそ、業務効率の向上や不正に対する抑止力は「ルール」で縛るよりも「意識」の変革によってはるかに効率が高くなります。つまり経営者や従業員の「意識」を向上させることは、ルールや仕組み作りと同様に、より良い内部統制構築においては必要不可欠な要素であると言えるのです。

内部統制で目指すべき変革は「業務システム」よりも、まず「個人の意識」

(コラム掲載日:2009年7月10日/動画掲載日:2010年7月16日)

<会計コラム連載>

第1回「内部統制プロジェクトチームの疲弊」 
膨大な量のマニュアル作成、各種システムの改修など、内部統制対策で疲弊する企業と問題点とは。

第2回「内部統制で変革すべきは“個人の意識”」 (動画あり)
従業員の感情や行動など“個人の意識”こそ、内部統制の有効性を示す大きなバロメータに。

第3回「シンプルで明快な内部統制に向けて」 
内部統制報告書、初年度の提出を終え、今、考えるべきは“自社規定ルールは本当に機能しているか”

第4回「内部統制におけるITの役割」 
PC操作が日常化した企業環境において、ITによる内部統制の守備範囲は、“業務システム”だけではないはず。

公認会計士 松澤大之

プロフィール:

松澤大之(まつざわひろゆき)

公認会計士。日本公認会計士協会東京会 監査委員会委員。大手監査法人勤務を経て、現在ハミングヘッズ経理財務担当部長。趣味はサッカーで、地元チームに所属。

 


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